ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔103〕欲しくてたまらなかった自転車の話をこの少年からキャロルは聴いていたのです。いついつには買ってもらえるんだ!!って。キャロルはあちこちに遊びに出掛けていて、その頃この教宗寺の階段で喧嘩をしています。気の強い女子達とです。それで、男の子、しかも優しい雰囲気のこの少年が心の拠り所でもあったんです。それは大人しい少年が持つインテリジェンスで、決して大人にもないこころの深層でした。その可愛い少年が事故に遭った日、近所の人にそれを聞いたキャロルは学校から帰って来てその場所にまず行ってみます。こんなことになるぐらいなら、自転車に待ち焦がれていたあのときの気持ちは何なんだ?と。そして家の者たちがまだ誰もそのニュースを知らないことに戦きます。ニュースはそれを知らない間は単なる出来事のひとつなんだな・・・と。後年、この少年のお兄様から話を聴きキャロルは驚愕するのです。小さいときに兄弟を失くすと、その想い出は逆に永遠に近くにあって、消えることがないんだという事実。この話を聴いてキャロルは幼いときに、或いは、青春期に兄弟や親を亡くした人々のこころの背景についてに思いを馳せます。残された人々の人生も一度そこで、途切れている・・・という思想の隔離です。そして途切れた場所からやっとこさ再出発をしているという心象なのです。