一週間に五日は勤務し、一日八時間勤務し、計、週四十時間勤務。それがいわゆる正社員だ。それを初めてこなして、帰宅したキャロルは暗い顔で疲れた~の一点張り。俺が初日の感想を訊いているのに、昨日までとは打って変わった冷淡な面持ちで返してきた。いいことなんか、人生にイッコたりともないね?って。ひどく機嫌が悪いのだ。ご機嫌ナナメってやつだろう。しかし、キャロルっていう人間には驚かされる。人生で初めて八時間大系という勤務をこなしたというのだ。もちろん一時間の休憩を入れると九時間だ。これだけ拘束されて初めて、拘束の難儀を知ったものと思われるが、人生に対する構えがなってない。俺なんか四十五年正社員をこなしてきたのに・・・・今晩もその勤務でこうして帰ってきてもビールを飲めないのがイライラの原因なのを俺は知っている。