ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔77〕いきなり奇声を上げたり、大きな声で反発したりと、ヨッキちゃんの荒ぶる声をよく階下から耳にしましたが、普段の彼は純純朴寡黙。その彼が慟哭でみんなを一喝することがありました。あのヘビ退治のときにも独特の意見でみんなのこころを戦慄させます。この家は呪われるぞ、へびは家の守り神なんだぞ!と。外では大人しいヨッキちゃんが、要所要所で重大発言をするのを観察しながら、子供のこころに芽生えた葛藤的不安がヨッキちゃんを成長させていることに気が付くんです。なぜなんだ?最高の環境がよりよきニンゲンを創り出すというキャロルの根底は揺らぎます。確かに外では何も発しない。そんなヨッキちゃんが、キャロルの容姿、特に鼻についていろいろ言ってきたことが逆にキャロルを強くしたともいえます。鼻が低いとか、形がおかしいとか、そういう彼の批判がキャロルにとって人生の洗礼になったのかもしれません。これを言うことで、彼は何かを癒しているんだな・・・という処の発見。矢上神社に中学校体育授業でバレーのパスを練習に行ったことがあったのですが、その時たまたま休みだったヨッキちゃんは、お縁の窓を開けてキャロルを見ていたようで、帰宅したらすぐに言ってきました。横顔がおかしい、どう見ても口の方が出ている、なんとかせんといかんなあ~って。内弁慶外ネズミという言葉を当時は知りませんが、キャロルは後年思ったのです。自分より優れないものを観てなにがしかの安心を得るというニンゲン特有の性〔さが〕を痛感したのです。