ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔76〕身内の大村にタヤの長女を母として、五人が生まれましたが、ヨッキちゃんは次男になります。戦争が終わって、なぜ?ってみんなが、思う場面でしょう。父が復員したから、ヨッキちゃんを両親のもとに帰せば?と思う場面ですが、あの終戦後、五人を育てるということの苦労を想像すればなんとなくわかる。タヤも自分が離したくないというワガママ半分、そして長女にもこころのどこかにタヤに対する依存心があったのでしょう。大村と長崎いつでも行き来が出来るって。しかし子供のこころは孤立します。今でもみんなと集合っていうとき、ヨッキちゃんだけは来ない。キャロルの母が亡くなっても、父が亡くなってもそうでした。孤立していてもヨッキちゃんは堂々としていてこころはしっかりしています。そういう具合にタヤの教育はしっかりと、ヨッキちゃんを後生守ってはいるのですが、会いたいな!とキャロルは思うし、そのヨッキちゃんの弟である三男にキャロルの母を荼毘に付した時に待合室でこう言われたことがあったのです。残念なのは俺たちは、一度もあなたのお母さんから挨拶をされたことがないって。ドキンとしました。そうだったのか・・・母は階下に棲むヨッキちゃんはおろか、その兄弟が遊びに来たときにも声を掛けたりしなかった。特に四男は矢上の実家タヤ宅から造船大学〔今の長崎総合科学大学〕に学びましたから四年間物を言わなかったことになる。恐れ大きい母の所業ですが、卒業後、長崎市役所に勤務、桜町パーキングなどの設計に関わった。このパーキング前を通るたびにかつてあった時代が恋しくなります。市役所もやがて移転するからです。