サファイア・マン《面白い男編》〔20〕明日くらいには、弟の家を訪ねてみようかと思っています。身内にある者達からさえ邪険に扱われたあの先週の一件。キャロルはまた思い出していたのです。鬼畜という2文字の漢字を。駆逐艦のエースとも呼ばれた脇田大佐も心配顔になってしまう場面ですが、この似ている両者、鬼畜と駆逐の音そのものにヒントはあるとキャロルは思うのです。鬼畜ならあんなに父が亡くなったとき遺体を怖がるでしょうか、目を真っ赤にするでしょうか。遺体を綺麗に拭いてあげたのは長女だったのです。キャロルも実際、後ろに下がったけど、長女が自分から買って出たのには驚きました。子供っていうのは、持つべきものだし、あんな立派な子供を持つ姉貴を見直したよ!と。弟がお金が足りなかったとき、レンタカーのお金を出してやるばかりではなく、長女のお婿さんが運転まで買って出ました。確かにプライドの高い弟で、運転までして頂けて、どんなに肩の荷が降りたことでしょう。この長女のお婿さんは、立派なお母様に手芸の達人に育てられ、今は鉄の会社でロボットの部品を作っていますが、このお母様が今回の村八分のような出来事を八分っていうのの反対側の二分とは、火事と人が亡くなったときのこと、本当にそれが分かっているのかしら?と訝っていらしたという。つまりこうやって親戚一同が冷酷視線で、弟のことをごちゃごちゃ言うとか、喪主の弟をけちょんけちょんに貶すという動作、言動がまずわからない・・・とぼやいていたそうなのだ。弟はきっと持ち前の面白さで、自分の人生をみずから切り開くとキャロルは信じてやまないのです。