サファイア・マン《緻密な男編》〔19〕昨日ほどイミシンな日はキャロルにとってシゲコにとって長女にとってありませんでした。あの親戚一同の一女性の、世が世ならば、この言葉なんですが本当に考えさせられました。駆逐艦雪風の本を弟は持参、みんなに脇田大佐の遺影を見せて説明するのです。もちろんその前に父の介護の話もしてからです。するとその脇田大佐の話をする弟の脇から、からかうような声で、世が世なら偉かったってことでしょ?今の貴男にそれは関係ない、速く仕事見つける方が先では?と剣もほろろ・・・。弟はそれでも雪風の錨の所在についてを説明するんですが、その女性がまた、世が世ならって話でしょ?って二回はおろか、三回も言ってみんなに苦肉の表情でイチャモンを付けたのです。彼女の父こそ元満蒙開拓軍記者。まだこういうことをこの息子言ってる、当分は埒あかないわね?っていう含みですがキャロルは弟が哀れに思えじっと推移を見守っていたのですが、さあみなさん!今日は有難うございました~〔さようなら〕と言わんばっかりに弟は二階から持って来ていたのでしょう、一万円札を出して、これでみんなで食事して下さい、俺は忙しいのでと。親戚はあっけにとられ一万円札を拒否します。するとみんなの前で、はい~姉貴アンタが欲しがってた一万円あげますよ~となんとキャロルに手渡すのです。それでお食事会は流れてしまいます。仕事をまず探すことね?と親戚全員に言われ弟は強行手段に出たのです。キャロル側も喪主の弟不在では食事会には行けないし、その一万円はみんなから容子ちゃんがもらっとかんね?と言われ有り難く頂いたのです。